薬剤師の仕事とは?気になる仕事内容をご紹介!

あなたは薬を飲む際に、薬剤師から丁寧に説明を受けた経験がありますか?薬剤師の仕事は、ただ薬を渡すだけではありません。2022年の薬剤師数は約32万人。6年間の厳しい修練を経て国家資格を取得した専門家たちが、私たちの健康を陰で支えています。

この記事では、そんな薬剤師の仕事内容を詳しくご紹介します。医師の処方箋に基づいた正確な調剤、薬の飲み方や副作用などの説明を行う服薬指導、そして処方内容に疑問があれば医師に確認する疑義照会など、患者さんの安全と健康を守るための多様な業務内容を分かりやすく解説します。

病院、調剤薬局、ドラッグストア、さらにはフリーランスとして活躍する薬剤師もいます。それぞれの職場における役割の違いややりがい、そして近年注目を集めるフリーランス薬剤師の魅力についてもご紹介します。薬剤師の仕事に興味がある方、あるいは日頃から薬を服用している方は、ぜひこの記事を読んで、薬剤師の仕事の奥深さと重要性を感じ取ってください。

薬剤師の仕事とは?気になる仕事内容をご紹介!

薬剤師は、皆さんが「薬」を安全に、そして安心して使えるようにサポートする、薬の専門家です。単にお薬を渡すだけでなく、薬のスペシャリストとして、皆さんの健康を守る様々な場面で活躍しています。薬の知識はもちろんのこと、患者さん一人ひとりの状況を理解し、きめ細やかな対応をすることが求められる、責任感の大きな仕事です。厚生労働省の統計によると、2022年の薬剤師数は約32万人。薬剤師は国家資格であり、6年間の大学での勉強と国家試験合格という険しい道のりを経て、初めてその資格を得ることができます。

薬剤師の仕事内容を理解するための主なポイント

薬剤師の仕事は多岐に渡りますが、その中心となるのは「調剤」「服薬指導」「疑義照会」です。これらの業務は、患者さんが薬を正しく安全に使用し、その効果を最大限に発揮できるようにするために、必要不可欠です。

調剤業務の流れと重要性

調剤とは、医師の処方箋に基づいて、患者さん一人ひとりに合った薬を正確に準備する作業です。薬の種類や量はもちろん、年齢、体質、他の病気や使用中の薬、そしてアレルギーの有無なども考慮し、安全に薬を使用できるよう調整します。この過程で、薬剤師は最新の添付文書をスマートフォンやタブレットで確認することもあります。これは、2021年8月以降、医薬品に紙の添付文書が同梱されなくなったためです。

調剤業務の流れは以下の通りです。

  1. 処方せんを受け取る: 患者さんから処方せんを受け取り、内容を丁寧に確認します。医師の指示通りか、記載ミスがないかなど、細心の注意を払います。
  2. 薬の準備: 処方せんの内容に基づいて、必要な薬を棚から取り出します。錠剤やカプセルを数えたり、粉薬を量ったり、液体薬を調合したりします。近年は自動化も進んでいますが、最終的な確認は必ず薬剤師が行います。
  3. チェック: 準備した薬が処方せんの内容と合致しているか、量や種類に誤りがないかを、別の薬剤師がダブルチェックします。これは「監査業務」と呼ばれ、調剤ミスを防ぐための重要なプロセスです。
  4. 薬を渡す: 患者さんに薬を渡す際に、薬の名前、飲み方、効果、副作用などをわかりやすく説明します。患者さんの理解が深まるよう、イラストや図を用いることもあります。

調剤業務において最も重要なのは正確さです。一文字でも、一錠でも間違えると、患者さんの健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。そのため薬剤師は、常に緊張感と責任感を持って業務に取り組んでいます。

服薬指導が果たす役割

服薬指導とは、患者さんが薬を正しく安全に使用できるよう、薬剤師が薬の使い方や注意点などを説明することです。薬の名前や効果だけでなく、飲み方、量、副作用、保存方法、他の薬との飲み合わせなど、患者さんが安心して薬を使えるように、丁寧に説明します。

服薬指導では、具体的に以下のような点について説明します。

  • 薬の名前と効果: 患者さんが何の薬を飲んでいるのか、どんな効果が期待できるのかを理解できるように説明します。
  • 飲み方と量: いつ、どれくらいの量を飲めば良いのかを具体的に説明します。食前、食後、寝る前など、薬によって飲むタイミングは様々です。
  • 副作用: 薬には効果だけでなく、副作用と呼ばれる望ましくない作用が現れることもあります。副作用の種類、症状、もし副作用が出た場合の対処法などを説明します。
  • 保存方法: 薬の効果を保つために、適切な保存方法を説明します。高温多湿を避ける、冷蔵庫で保存するなど、薬の種類によって適切な保存方法は異なります。
  • 他の薬との飲み合わせ: 複数の薬を一緒に飲む場合、相互作用によって効果が強まったり弱まったりすることがあります。現在飲んでいる薬を薬剤師に伝え、飲み合わせを確認することが重要です。

服薬指導は、薬の効果を高め、副作用を防ぐために非常に重要な役割を果たしています。薬について疑問や不安なことがあれば、遠慮なく薬剤師に相談しましょう。

疑義照会の必要性とは

疑義照会とは、薬剤師が処方せんの内容に疑問点を見つけた場合、処方した医師に問い合わせて確認することです。例えば、薬の量が多すぎる、飲み合わせが悪い、患者さんの体質に合わないなど、薬剤師の専門知識に基づいて、患者さんの安全性を確保するために必要なプロセスです。薬剤師には、医師に疑義照会する責任と義務があります。

疑義照会が必要なケースには、以下のようなものがあります。

  • 薬の量や組み合わせが適切でない: 処方された薬の量や組み合わせに問題がある場合。
  • 患者さんの体質や持病に合わない: 処方された薬が患者さんのアレルギーや持病に合わない場合。
  • 処方せんの記載に不備がある: 処方せんに薬の名前や量が正しく記載されていない場合。

薬剤師は、患者さんの安全を守るため、疑問があれば必ず医師に確認します。疑義照会は処方ミスや副作用を防ぎ、患者さんが安心して薬物治療を受けられるようにするための重要な役割を担っています。医師の立場からも、薬剤師による疑義照会は大変心強く、患者さんの安全を守る上で非常に重要なシステムだと考えています。

勤務先別の薬剤師の役割と仕事内容

薬剤師の仕事は、働く場所によって業務内容が大きく変わってきます。大きく分けて、病院、調剤薬局、ドラッグストア、企業、行政機関など、様々な場所で活躍しています。それぞれの現場で、薬剤師は専門知識を活かし、人々の健康を支えています。

病院薬剤師の主な業務

病院薬剤師は、入院患者さんの薬物療法を安全かつ効果的に行うために、医師や看護師と連携して業務を行います。チーム医療の一員として、患者さん一人ひとりの病状や体質、他の薬との飲み合わせなどを考慮し、最適な薬物療法を提案します。

具体的には、以下のような業務があります。

  • 入院患者さんのためのお薬の調剤と服薬指導: 医師の処方箋に基づいて、入院患者さんのお薬を調剤します。調剤の際には、薬の量や種類、飲み方などを確認し、患者さんに合わせた適切な形でお薬を提供します。また、患者さんやそのご家族に対して、お薬の効果や副作用、注意点などを丁寧に説明する服薬指導も行います。
  • お薬の飲み合わせや副作用のチェック: 患者さんが複数の薬を服用している場合、薬同士の相互作用によって効果が強まったり弱まったり、あるいは予期せぬ副作用が生じる可能性があります。病院薬剤師は、患者さんの服用している薬の飲み合わせをチェックし、安全にお薬を服用できるよう管理します。
  • 点滴や注射薬の調製: 入院患者さんには、点滴や注射によって薬剤を投与する場合があります。病院薬剤師は、これらの薬剤を適切な濃度や量で調製し、投与ミスが起こらないよう細心の注意を払います。特に、抗がん剤のような副作用の強い薬剤を取り扱う際には、安全キャビネットを用いるなど、より高度な知識と技術が求められます。医師の立場から見ても、薬剤師による注射薬の調製とチェックは、医療安全上非常に重要なプロセスだと考えています。
  • 医師や看護師と協力して患者さんに最適なお薬の選択: 患者さんの病状や体質、他の薬との飲み合わせなどを考慮し、医師や看護師と協力して最適なお薬を選択します。場合によっては、医師に疑義照会を行い、処方内容の変更を提案することもあります。厚生労働省も薬剤師の疑義照会の重要性を強調しています。
  • 院内のお薬の管理や発注: 病院内で使用されるお薬の在庫管理や発注業務も病院薬剤師の重要な仕事です。必要な医薬品を適切な量で確保し、常に最新の医薬品情報を入手することで、患者さんに最適な医療を提供できるよう努めます。
  • チーム医療の一員としてカンファレンスへの参加: 患者さんの治療方針を決定するカンファレンスに参加し、薬物療法の専門家としての意見を述べます。医師や看護師、その他の医療スタッフと連携を取りながら、患者さんにとって最善の医療を提供できるよう尽力します。

調剤薬局での薬剤師の役割

調剤薬局の薬剤師は、病院やクリニックなどから発行された処方箋に基づいてお薬を調剤し、患者さんへの服薬指導を行います。患者さん一人ひとりの状況を把握し、きめ細やかな対応をすることが求められます。

具体的には、次のようなお仕事があります。

  • 処方箋に基づいたお薬の調剤: 患者さんから受け取った処方箋の内容を慎重に確認し、正確にお薬を調剤します。薬の種類や量、服用方法などを確認することはもちろん、処方箋の記載ミスがないかどうかもチェックします。
  • 患者さんへの服薬指導(お薬の効果と副作用、飲み方、注意点など): 患者さんにお薬を渡す際には、薬の名前、効果、飲み方、副作用、保存方法、他の薬との飲み合わせなどについて、わかりやすく説明します。患者さんの年齢や理解度に合わせて説明方法を工夫することで、患者さんが安心して薬物療法を受けられるようサポートします。
  • お薬手帳やお薬歴の管理: 患者さんのお薬手帳やお薬歴を管理することで、過去にどのような薬を服用していたか、アレルギーの有無などを把握します。これにより、重複投与や飲み合わせの確認など、より安全な薬物療法を行うことができます。
  • 飲み合わせや重複投与のチェック: 患者さんが複数の医療機関を受診している場合、同じ成分の薬が重複して処方されている可能性があります。調剤薬局の薬剤師は、このような重複投与をチェックし、患者さんの安全を守ります。
  • 健康相談: 患者さんから薬に関する相談を受けることも、調剤薬局の薬剤師の大切な仕事です。薬の効果や副作用、飲み合わせなど、患者さんの疑問や不安に丁寧に答えることで、患者さんの服薬アドヒアランス(薬物療法をきちんと継続できるか)の向上を目指します。
  • 在宅訪問による服薬指導や健康管理: 高齢者や体の不自由な方のために、自宅や施設に訪問して服薬指導や健康管理を行う在宅訪問サービスを提供する薬局もあります。薬の管理が難しい患者さんにとって、薬剤師による在宅訪問は大きな支えとなります。

フリーランス薬剤師の魅力と仕事の特徴

フリーランス薬剤師は、企業などに所属せずに、自分の裁量で仕事内容や勤務時間、勤務場所などを自由に選択できる働き方です。近年、多様な働き方を求める薬剤師の間で注目を集めています。

フリーランス薬剤師の魅力は、以下のとおりです。

  • 複数の薬局や医療機関で働く: 複数の薬局や医療機関で働くことで、様々な経験を積むことができます。
  • 自分の専門性を活かした仕事を選択: 特定の疾患領域や業務内容に特化して働くことができます。
  • 勤務時間や勤務場所を自由に設定: 自分のライフスタイルに合わせて、勤務時間や勤務場所を自由に設定できます。
  • ワークライフバランスの実現: 仕事とプライベートのバランスを取りやすい働き方です。
  • スキルアップやキャリアアップの機会: 様々な現場で経験を積むことで、スキルアップやキャリアアップにつながります。

一方で、フリーランス薬剤師には、以下のような特徴もあります。

  • 自分で仕事を探す必要があるため、営業力や交渉力が必要です。
  • 収入が不安定になる可能性があります。
  • 社会保険などの福利厚生が整っていない場合があります。

フリーランス薬剤師という働き方は、メリットとデメリットを理解した上で選択することが重要です。

まとめ

薬剤師の仕事は、患者さんの健康を守る上で非常に重要な役割を担っています。調剤、服薬指導、疑義照会といった主要業務に加え、勤務先によって病院薬剤師、調剤薬局薬剤師、さらにはフリーランス薬剤師など、多様な働き方があります。それぞれの場所で求められるスキルや責任は異なりますが、共通して言えるのは、高い専門性と責任感、そして患者さんへの細やかな配慮が不可欠だということです。薬剤師を目指している皆さん、そして薬剤師の仕事内容に興味のある皆さん、この記事が少しでも皆さんの理解を深める一助となれば幸いです。薬剤師の仕事は、社会貢献度の高いやりがいのある仕事です。少しでも興味を持たれた方は、ぜひ薬剤師の仕事についてもっと調べてみてください。

参考文献

  1. 厚生労働省/令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
  2. 厚生労働省/令和2(2020)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
  3. (株)じほう/保険調剤業務の流れ
  4. 厚生労働省/要指導医薬品について
  5. 厚生労働省/在宅医療における薬剤師業務について
  6. 厚生労働省/令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況
  7. 文部科学省/薬学教育
  8. 文部科学省/薬学部における修学状況等 2023年(令和5年)度調査結果